2025年4月4日 5時00分

世界は変わってしまうのか

 木々が蒼く(あおく)茂る山も、流れる水を遮ることはできない――。中国の宋詞(そうし)の引用が、人民日報(じんみんにっぽう)に大きく載ったのは1999年のことだ。当時の江沢民(こうたくみん)国家主席の言葉を伝えるもので、中国のWTO加盟の流れは止められない、と訴える(うったえる)内容だった▼もう少し説明しなければ、分からないだろう。共産党政権はソ連崩壊を見て、自由貿易圏の仲間入りを強く求めていた。米国に秋波(あきなみ)を送りつつ、党内の反対派の説得に江氏は懸命だったようだ▼2001年、念願は叶(かな)う。米国との交渉妥結(こうしょうだけつ)を経て、中国はWTOに入り、発展のアクセルを踏み込んだ。四半世紀が過ぎ、いま私たちが目にしているのはそんな中国の台頭と、米国の力の陰りが招く一つの帰結なのかもしれない▼世界はこれで、変わってしまうのだろうか。衝撃の発表である。「4月2日は、米国が再び豊かになりだした日として、永遠に記憶されるだろう」。得意げに語るトランプ氏の弁に、しばし言葉を失う▼ほぼすべての国に一律10%関税とは、まるで世界への宣戦布告のようだと言ったら、言い過ぎか。日本には24%、中国に34%の関税をかけるという。とうの米国が受ける打撃も大きいに違いない▼冒頭の話に戻せば、この韻文(いんぶん)には対句(ついく)がある。〈すべての水は東へと流れていく〉。いまから思うと意味深長(いみしんちょう)である。東とはどこか。中国から見て東の日本か米国か、あるいは地球をぐるりと回って中国か。世界全体が、とんでもない悲劇に見舞われようとはしてないか。