2025年4月1日 5時00分

ウソツキクラブ

 日本ウソツキクラブという組織があるらしい。いや、かつてあったと言うべきだろうか。1990年代のころ、心理学者の河合隼雄(かわい はやお)氏が会長をつとめ、毎年4月1日、大々的(だいだいてき)に例会を開いていたそうだ。参加者がウソ比べをして、一等には賞金も出たという▼もっとも、そんな例会の案内状を真に受け、ノコノコと出かけていくような人は「会員の資格なし」と除名される。「したがって私もせっかくの大会に未だ(いまだ)一度も出席したことがない」と会長ご本人が書いている(『あなたが子どもだったころ』)▼いったいどこまでが本当の話かと悩ませてしまったら、申し訳ない。つまらぬウソだと思う方は電話で尋ねてみるのも一興(いっきょう)かもしれない。なんと世界のどこからでも、800番にかけると、クラブにつながるらしいから▼「マジメは休み休みにして頂きたい」。河合氏の広く知られた一言を懐かしく、思い出す。生真面目がすぎ、四角四面(しかくしめん)の日本社会だと揶揄(やゆ)できた時代ははるか彼方(かなた)か。いまの世に満ち満ちているのは、誰かを傷つける酷い(ひどい)ウソばかりである▼右をみれば、「人権侵犯の認定は受けておりません」と開き直る前衆院議員がいる。左をみれば、部下の告発を「ウソ八百(はっぴゃく)」と断じ、事実が認定されても責任をとらない知事がいる。海の向こうで「もう一つの真実」を語る大統領もお元気そうだ。冗談も休み休みにならないものか▼念のために言えば、この文章にウソはない。そう、きょうは、エープリルフールである。