2025年4月25日 5時00分

男と女の詰将棋(つめしょうぎ)

 「女流棋士」という制度ができたのは1974年のことだ。将棋界で、男女の実力差(じつりょくさ)は大きく、「棋士」は男性ばかりだった。女性だけの“土俵(どひょう)をつくり、その活躍を促そうとの制度である。やがて女流ならぬ女性の棋士が誕生すると期待されていた▼それから半世紀。あと一歩まで来ているが、依然として棋士になった女性はいない。かつて男女差が大きかったチェスは、女性の活躍が目立つようになって久しい。なぜ将棋はそうならないのか▼日本将棋連盟が女流棋士の棋士編入で新たな制度をつくる方針という。男性と戦い、勝ち抜かなくとも、女流棋戦の成績だけで棋士になれる道が開かれるそうだ。男性にも棋士昇格は狭き門だけに、賛否両論の受け止めが広がる▼「女流棋士がさらに上を目指すモチベーションになれば」と羽生善治(はぶ よしはる)会長。鋭手(するどて)はもちろん、凡手(ぼんしゅ)と見える駒(こま)も、後々、盤上の要となるのが羽生マジックと呼ばれる名人技(めいじんわざ)である。今回の指し手はどうだろう▼門外漢として言えば、その前にすべき改革もあるように思う。過密な対局日程で、頭脳戦が体力偏重(へんちょう)の勝負になり、不利益を生じさせていないか。妊娠した女性が体調不良で不戦敗(ふせんぱい)にされたのも、時代遅れ甚だしい(はなはだしい)▼初の女流棋士、蛸島彰子(たこじまあきこ)さんが昔、書いていた。「“男と女”という詰め将棋、私には難解すぎて、ため息が出ます」。本来、女流も男流もない。あるのは至高(しこう)の将棋を目指し、楽しむ人間だけである。それを邪魔しているのは、何か。