2025年4月19日 5時00分
地図の日
伊能忠敬は55歳のとき、最初の測量の旅に出かけた。従者ら5人とともに江戸を発ち、奥州街道を経て、いまの北海道別海町まで。往復3200キロを180日で歩いたという。こちらもほぼ同じ年齢だが、会社との往復で1日1万歩を達成するのがようやくだ。健脚ぶりに驚く▼伊能は、歩幅を69センチとほぼ一定に保ち、初回の旅ではその積み上げで距離を測った。坂道では四分儀を使って勾配も出し、関数表で平面距離を割り出した。どの地図にも標高の記録はないが、富士山は特別だったのだろう。静岡・由比付近からの測定値がある。メートル法に換算すれば3733メートルになるそうだ▼完成した日本全図の精密さは、いまさら言うまでもあるまい。ただ「昭和」の世になるまで、屋久島などの20万分の1の地形図では資料として活用されていたと知って、もう一度驚かされた▼伊能の活躍から200年あまり。国土地理院が今月、全国の三角点や水準点の標高データを一新した。地震などで生じた値のずれを、これまでは10年以上もかけて、地表で尺取り虫のように測量を繰り返すことで補正してきたが、衛星を使ったやり方に改めたからだ▼このため富士山の三角点の標高は、3775メートル51センチから56センチに。ちょっとだけ高くなった。なぜだかうれしい▼きょうは「地図の日」。旧暦で、冒頭の旅に伊能が出発した日にあたる。天気予報によれば、各地で夏日になりそうだ。ときには地図を手にして、見知らぬ町へ出かけてみようか。