2025年4月12日 5時00分

不安の時代と若手社員

 大変な時代になった。トランプ米大統領が放つ数字は、コロコロと変わる。日本に課せられた24%の関税は、13時間後に10%へ下げられた。中国への追加関税の合計は125%と発表されたが、やっぱり145%だったという▼各地で株価の乱高下(らんこうげ)が続くが、私が一番心配しているのは物価の上昇だ。近所のスーパーでは、食用油もパンも卵もどんどん値上がりしている。倍近くにまで上がったコメは、備蓄米(びちくべい)を放出しても値が下がらない▼いまの気持ちを言い表せば、不安に尽きる。きょうあすの暮らしにとどまらず、将来に対する不安も大きい。世界では戦争や紛争が続き、いまや国際的な経済秩序まで崩壊しかねない。何か皆で良くない方へ向かっているという、漠然(ばくぜん)とした不安を感じる▼この春、社会に出たばかりの若者たちを思う。若手社員の早期離職が言われて久しい。かつて小紙は、職場環境への「不満型(ふまんがた)」より、自分が何者にもなれないという「不安型」の転職が高まっていると伝えた。世界を覆う(おおう)不安が、個人の不安に拍車をかけないだろうか▼厚生労働省が昨秋公表した調査によると、就職して3年以内の離職率は大卒で約35%だったという。3人に1人以上が辞めているのかと驚いた。最近は退職代行のサービスもあり、今年もすでに辞めた人がかなりいるようだ▼きょうは土曜日。社会人になって2度目の週末の人もいるだろう。出かけるもよし、ゆっくり休むもよし。いまの不安や焦りは、いつか翼(つばさ)にもなる。