2025年4月2日 5時00分
もしも中居正広氏が……
もしも、と想像をしてみる。もしもこの問題が明らかになっていなかったら、どうなっていただろうか。いまも中居正広氏は素知らぬ顔でテレビの番組に出ていて、私たちは何も知らぬまま、彼の冗談を楽しく聞いているのだろうか▼そう思うと、ぞっとする。逆に言えば、私たちはもう、知っている。もしも彼がいま、何か愉快な言葉を発しても、かつてと同じように笑うことなどはありえない▼フジテレビの第三者委員会が調査報告書を公表した。300ページ近くを一気に読んだ。おぞましい記述に、何度も目がとまる。フジ社員が、性暴力をうけた女性の退社を伝えると、中居氏はまるで鳥の羽根のように軽く、返信している。「了解、ありがとう。ひと段落ついた感じかな。色々たすかったよ」▼引退宣言もいいが、いまに至るも彼はどうして、自分のしたことを、自分の言葉で語ろうとしないのだろう。お茶の間の人気に支えられてきた者として、あるいは一人の大人として、公の場で、もっと言うべきことはないのだろうか▼フジの側の対応のひどさには、もう言葉もない。「失ったものが戻ってくることはありません」。きのう女性は談話を出した。こんなことは業界だけでなく、「社会全体から無くなることを心から望みます」との言葉は、何とも重い▼もしも、と想像する。誰かが傷つき、悲しむようなことが近くで起きていなかったか。それに気づかない自分はいなかったか。手を胸に、いくつもの「もしも」を思う。