2025年2月27日 5時00分
税金嫌い(ぜいきんきらい)
英国の思想家エドマンド・バークは保守主義の父といわれ、人間の理性について思考を重ねた。251年前の演説で述べている。「課税して喜ばせることは、愛して賢明であること以上に、人間にはできない」。恋に落ちると理性を失うように、人間とは税金を嫌うものだと▼その傾向は古今東西を問わないが、どれだけ税金を嫌うかは濃淡(のうたん)がある。例えば北欧諸国は負担が重いが、充実した社会福祉制度で不満は低い。逆に日本は、税金を嫌う度合いが高いとされる▼なぜ、日本では嫌われるのか。まず思いつくのは「税金を払っているのに利益を受けていない」と感じる人が多いことだ。簡素であるべき税制自体も複雑でわかりにくい▼税金は嫌いだが、どう使われるかへの関心も低いのではないか。日本では大多数の会社員は給料から税金が天引き(てんびき)される。だから実感がわかないと思っていたが、諸富徹(もろとみ とおる)著『税という社会の仕組み』によると、問題はもっと根が深いようだ▼歴史をひもとけば、欧米では重税や不公平さなどの不満が市民革命や独立戦争へ発展し、近代国家が成り立った。日本では、江戸時代の年貢(ねんぐ )のように上から下へ押しつけられたままの印象だ。百姓一揆など重税への抵抗運動はあったが「勝ち取った」ことがなく、納税倫理が育たなかったという▼強い「痛税感」が政府への不満によるものなら、納税者として正せ(ただせ)と求める権利と責任がある。選挙で投票するのは、税金をどう使うかを選ぶ行為でもあるのだ。