2025年2月1日 5時00分

森友問題の逆転判決

 「法匪(ほうひ)」という言葉が、頭に浮かぶ。かつて周恩来が日中の国交正常化交渉で言ったとか、言わなかったとか……。辞書をひけば、旧満州国の法務官僚への罵言(ばげん)とある。法律を都合よく解釈し、詭弁(きべん)を弄し(ろうし)、民をかえりみない役人(やくにん)を指す▼森友問題で、財務省が検察に提出した文書を開示しない。それどころか文書が存在するかどうかも明らかにできないという。すでに検察の捜査は終わったが、将来の捜査にも「支障」があるからだと。どういうことか。何とも腑(ふ)に落ちない▼情報公開の是非を審査する第三者機関は、再考を求めている。しかし、がんとして、聞く耳をもたない。この国の未熟な公文書管理の歩みをふり返ってみても、異例のことである▼さすがに裁判官もおかしいと思ったのだろう。大阪高裁が、文書の存否さえ明かさないのは「違法」とする判決を下した。財務省は上告などせず、すみやかに文書を開示すべきである▼9年前、国有地が8億円も値引きされて、分割払いまでが認められ、森友学園に売却された。「特例」が許された経緯はナゾのままだ。当時の記録からは、安倍元首相の妻の名が消された。文書の改ざんを強いられた近畿財務局の職員、赤木俊夫(あかき としお)さんは自ら命を絶った。まだ何か隠そうというのか▼「真実を知りたいだけです」と妻の雅子さんは訴えている。公文書は、官僚のものではない。過去と、現在と、未来とにおける、国民の大切な財産である。その当たり前を、忘れてもらっては困る。