2025年2月28日 5時00分

「ある幹部」とその仲間たち

 「お名前だけはですね、ちょっとこの場では差し控えさせていただきたい」。自民党派閥の裏金事件できのう、衆院予算委が聴取した当時の安倍派会計責任者、松本淳一郎氏の証言である。パーティー収入で還流の再開を求めたという「ある幹部」を特定せず、歯がゆさを感じた▼松本氏はこの幹部について「本来ならご自身の方から言っていただければと思った」とも述べた。私の口からは言えないが、自ら名乗り出てもらいたい――。そんな思いがあるようにも感じたが、どうだろう▼松本氏は還流の再開を「ある幹部」が求め、4人の幹部が会議で再開を決めたと認めた。「決まっていなかった」という一部の会議出席者の説明との食い違いは残ったままだ。これで調査が終わったとはとても言えない▼一昨年に裏金疑惑が噴出したとき、自民党にとってはリクルート事件以来の危機とも言われた。1988年に発覚したこの贈収賄(ぞうしゅうわい)事件では、政治家と官民の有力者たちが特権階級のように未公開株を譲渡(じょうと)され、濡(ぬ)れ手で粟(あわ)と言われた▼あのころ、一般庶民はかつてないほど政治不信を高めた。同時に学びもあった。政治資金には厳しい規制が必要なこと。議員に対しては資質を問い続け、得た結論を選挙でぶつけること▼密室、特権、あいまいな決着。37年たっても変わらぬ光景に、呆然(ぼうぜん)とする。会計担当の責任は重い。だが「ある幹部」と「その仲間たち」に問いたい。すべてを事務方に押しつけて、良心が痛まないのですか。