2025年2月16日 5時00分
ユーチューブ20年
「つなげて付き合おう」は、20年前の2月に誕生したユーチューブのうたい文句だった。当初は出会い系サイトになるはずだったのだ。恋人募集中の人が動画で自己紹介し、好みのタイプを伝える。米決済大手の社員だった若者3人の戦略は利用者がおらず、暗礁に乗り上げた▼出会い系をあきらめ、呼びかけを「自分を発信しよう」へ変えた。開放的な動画投稿サイトへの方向転換だった。初投稿の動画は19秒で、画質も粗い。彼らの1人が動物園のゾウを背景に「とても鼻が長くてクールだね」と語った▼今度は世界中で大人気になり、翌年にはグーグルが約2千億円で買収した。スマホや情報通信技術の普及に後押しされ、だれもが無料で動画を見られて投稿できる時代が本格化した。再生回数の多い投稿で収益を得るユーチューバーも、続々と出現した▼日本語版ができたのは2007年で、いまや18歳以上の国内ユーザーは7300万人を超える。特に10代の利用率は9割を超え、テレビを大きく上回るとの調査結果も。選挙で候補者らが発信して支持を集めるなど、影響力は大きい▼佐々木裕一など著『スマホでYouTubeにハマるを科学する』によると、若年層はユーチューブで世界が広がると考えるようだ。だが、この「世界」は思ったより狭く、偏っている可能性があるのではないか▼この20年で動画の画質は向上し、集まる情報も膨大になった。進化を続けるネット空間でも迷わず、視野を広げる手段にしたい。