2025年2月2日 5時00分
雪と受験と立春と
たった一人。白く息を吐きながら、ギュッギュッと新雪を踏みしめていく。教科書で出会った高村光太郎の「道程」は、読みかえすたびにそんな光景を思い起こさせる▼〈僕の前に道はない/僕の後ろに道は出来る/ああ、自然よ/父よ/僕を一人立ちにさせた広大な父よ/僕から目を離さないで守る事をせよ〉。自分の力で人生を切り開く。詩人が決意を文字にしたのは、ある年の2月のこと。詩の舞台は冬というわが想像も、そう間違っていないのかもしれない▼さて、そんな雪景色に今朝は一変しているだろうか。都心を含めた関東甲信では雪が積もるかもしれないと、気象庁が警戒を呼びかけている。交通機関の乱れのおそれもある。気が気でないのは受験生たちだろう▼首都圏では中学受験の熱が高く、いまがピークだ。きのうの早朝は電車の中で、親子連れを何組も見かけた。やや緊張した面持ちの子。マフラーを巻き直してやったりと、何くれとなく世話をやく親。どちらも大変だ。私立大でも入試が始まっている▼週明け以降には、強い寒波がやってくる。暖かい格好で備え、受験会場までの道程では、凍った路面で転んだりせぬようにくれぐれもご注意を▼冒頭の詩は、初出時には100行を超える長い作品だった。そこに、若者へのこんなエールがある。〈歩け、歩け/どんなものが出て来ても乗り越して歩け/この光り輝やく風景の中に踏み込んでゆけ〉。あすは立春。厳しい月日を越えた者に、きっと花は咲く。