2025年3月27日 5時00分

旧統一教会への解散命令

 熊本の男性は驚いた。〈解怨7代 54万6千円〉〈母方先祖解怨 30万9千円〉。妻の手帳にこんな献金記録が記されていた。借金もあるようで、押し入れには旧統一教会の総裁らの写真。「家族も巻き込まれているのにどうしようもない」。3年前の記事にあった嘆き(なげき)も、これで少しは変わるのだろうか▼教団への解散命令が下った(くだった)。生活を揺るがすほどの高額献金の勧誘が続く恐れがある、と東京地裁(ちさい)は判断した。大きな節目だろう。だからといって問題を幕引き(まくびき)にされては困る。問いたい相手は自民党である▼「家族」の大切さを説きながら、霊感商法などで家庭を崩壊させてきた教団と手を握ってきたのでは。「日本人の誇り」を訴えながら、日本は「サタン側の国家なのである」と主張する教団に協力を仰いできたのでは。指摘されてきたのは、そうした矛盾だった▼昨秋、1枚の写真が明るみに出た。2013年の参院選の直前に、安倍晋三首相らが教団の会長らと党本部で面談し、撮られたものだとされる。地方議員の選挙事務所に信者がボランティアとして出入りするのとはわけが違う▼党と教団の間に、やはり組織的な関わりがあったと考えるのが自然だろう。だが自民党は調査をせぬまま、「組織的な関係はない」の一点張りだ。もはや幕を引きたいのに違いない▼教団は解散命令で「事態の改善を図ることを期待するのは困難」と突き放された。このままなら、自民党も同じ烙印(らくいん)を国民から押されるかもしれない。