2025年3月4日 5時00分
ともだち100人できるかな
小学校へあがる直前に引っ越した。一緒に遊んだみんなと別れ、違う学校へ。いまはふてぶてしい中年にも、繊細な幼少期はあったのだ。だから、あの歌には感ずるところが多かった。まど・みちおさんの作詞である。〈一ねんせいに なったら/ともだち ひゃくにん できるかな〉▼学校ってどんなところだろう。うまくやっていけるかな。胸に兆す(きざす)不安を楽しみに変え、夢を膨らませてくれる。小学館の雑誌『小学一年生』も、そんな応援団の一人だった。今年で創刊100周年だそうだ。戦前からの歴史の積み重ねがあったとは。最新の4月号を久しぶりに手にとった▼ページをめくると、いまのプログラミング教育にあわせたクイズがある。かと思えば、のび太とドラえもんは相変わらず、土管(どかん)のある空き地でみんなと遊んでいる。学校生活を伝える特集では、遠足などが紹介されており、笑顔がまぶしかった▼友達がたくさん出来るのはうれしい。富士山(ふじさん)の上で皆でおにぎりを食べられたら、爽快に違いない。でも、気をつけないといけないよと、まどさんは「うつくしいことば」という詩も書いている▼〈たのしそうに 口にしあっている/――ともだち/という うつくしい ことばを〉〈ともだちで ないものには/しらんぷり しておこうよ/という いみにして…〉▼友達を、わけへだてを正当化する道具にしてはいけないという戒めだろう。子どもたちへの、いや大人たちにとっても、大切なメッセージである。