2025年3月18日 5時00分
将来を壊さないために
「カジノ」という言葉はイタリア語で家を意味するカーザに由来し、中世のベネチアが起源だという。屋敷でギャンブルに興じる(きょうじる)貴族らを公衆の目から遠ざけようと、当局者がカジーニと呼ぶ小さな家へ転居させた(ペッカ・スルクネンら著『ギャンブルの何が問題なのか?』)▼700年余(よ)を経て、カジノは時間を問わず庶民の手の上に乗る違法な存在となった。スマホから接続し(せつぞくし)、ゲームで賭けるオンラインカジノだ。警察庁による初の実態調査では、国内の利用経験者は推計で約337万人、賭けの総額は年間約1兆2423億円にのぼった▼賭博(とばく)が合法な(ごうほうな)国に拠点(きょてん)があっても、日本から賭ければ賭博罪(とばくざい)にあたる。だが警察庁が調べたサイトのほとんどは日本からの利用の禁止を明示しておらず、経験者の4割近くが「違法性の認識がなかった」と答えたという▼無自覚の理由として、多くが「パチンコや公営競技などがあるから」と回答した。これが理由で海外の事業者から、「日本人は標的にしやすい」と思われているのかもしれない▼サイトへの接続を遮断するブロッキングが対策の一つとされるが、効果を疑問視する意見もある。簡単に迂回(うかい)でき、対象リストの更新などに膨大な(ぼうだいな)人手(ひとで)や手間がかかるからだ▼今回の調査では、経験者の過半を20、30代が占めた。広告に誘われて始め、抜けられなくなる。うそをつき借金をする。そうしてギャンブル依存症になったら、将来を壊しかねない。とにかく、手を出さないことだ。