2025年1月11日 5時00分
沖縄での性暴力事件
沖縄タイムスが先日、テレビ欄を潰して年表を載せていた。1945年以降に起きた米兵による性暴力事件の一覧である。小さな活字にすることで、やっと1ページに収めたのだろう。全部で371件。強姦(ごうかん)という文字を延々たどるのは苦しかった▼だが、それが沖縄の現実である。例えば95年。いわゆる少女暴行事件が秋にあり、県民大会で抗議の声はうねりとなった。その冬だ。米兵が「飲食店勤務の2人を強姦」「14歳女性を強姦」。あのさなかに別の悲劇が続いたこと、それを知らずにいたこと。目を射抜かれた▼被害にあったのは私や娘だったかもしれないという思いは、かの地で強い。こんな歌がある。〈ふるさとの基地に殺された娘たち隆子に由美子徳子(のりこ)も里奈も〉玉城洋子。由美子ちゃんは6歳で、里奈さんは20歳で暴行・殺害された。残る2人は米軍事故の犠牲者だ▼望まぬ記憶を、沖縄はいつまで刻まねばならないのか。女性に性的暴行をしたとして、在沖海兵隊の男が書類送検された。事件があったのは昨年11月。別の性暴力事件で、米軍が再発防止策を出した数カ月後だ▼米側や政府が判で(はんで)押したように唱える「綱紀粛正(こうきしゅくせい)」がいかにあてにならないか。歴史が証明する言葉の空しさ(むなしさ)に、また一例がつけ加わった。掲げた防止策でさえ、まだ実現されていないものがある▼こんな事件は最後にしてほしい――。95年の県民大会から30年。世代がひと巡りする間、沖縄が求めてきたのは、当たり前のことに過ぎない。