2025年1月6日 5時00分
人類の進化と腰痛
腰痛持ち(こしつうもち)に、冬の寒さはつらい。立っても座っても痛む腰をさすりつつ、人類の進化について考えた。腰痛は、直立二足歩行(ちょくりつにそくほこう)を選んだ人類の宿命だ。チンパンジーと枝分かれして(えだわかれてして)、はや600万年。脊椎(せきつい)は腰部(ようぶ)で湾曲(わんきょく)していったが、痛みの解消までには至っていないようだ▼人類進化の研究は近年、大変な速さで進歩している。科学誌に論文が次々と掲載されて、データが更新される。3年前には、古代人の骨のDNA解析をしたスバンテ・ペーボ博士がノーベル生理学・医学賞を受けた▼進化の過程で気になるのは、やはり私たちホモ・サピエンスだ。約30万年前にアフリカで生まれたとされる。その地を出た後に、ネアンデルタール人と交雑(こうざつ)していたと示したのがペーボ博士だ▼太古のロマンは感じるが、あまりに壮大な話ではある。そんななか、昨秋に邦訳(ほうやく)が出たグイド・バルブイアーニ著『人類の祖先に会いに行く』を読み、一気に想像が膨らんだ。330万年前の猿人(えんじん)からホモ・サピエンスまで「15人のヒト」を、復元像つきで紹介している▼遺伝学者の著者が最も言いたかったのは、人間を人種で分けるなということだと思う。「人類は異なるグループに分割されない」の文に、思いが凝縮(ぎょうしゅく)されている。人種で差別する者はいるが、科学的な根拠はないのだと▼いまの地球上に、ヒトはホモ・サピエンスしかいない。そう考えると、差別や偏見に意味はないとわかる。人類史を学ぶのは、私はだれなのかを問うことでもある。