2025年1月22日 5時00分

フジテレビへのCM自粛

 テレビCMを見た。「お前がやったんだろ」。刑事が容疑者に迫る。机をバンッと叩(たた)いて証拠に示したのは、スマホのSNSアプリ。「知らない人がつぶやいてんだよ」。どんな投稿も鵜呑(うの)みにして追い込んでいく、その名も決めつけ刑事(デカ)――▼やけに攻めた広告だなと感心していたら、最後に「ACジャパン」のロゴが流れた。東日本大震災の後の公共広告で、何度も目にした名前である。タレントの中居正広さんが起こしたトラブルへの対応をめぐって、フジテレビでの自社CMを差し替える動きが広まっている。その一つだった▼特定の番組でなく、あるテレビ局全体に対して、しかも数十超の企業が、とは異例の事態だ。きっかけは先週末にあったフジの会見だという。メディアの一員として言わせてもらえば、あれがテレビ局のやることかとあきれる。フジの社内にも、唇をかんでいる人たちがいるだろう▼動画撮影を禁じ、会見途中で速報を流すことを認めず、NHKや在京キー局の質問を許さない。取材先の企業などに同じことをされたら、フジは何と言うつもりか▼今後の調査が、問題の核心であることは言うまでもない。私たちが見てきた番組の裏、どこか見えないところで、苦しみ、でも声をあげられない女性がいたのか。これまでどうだったのか▼徹底した調査と説明が必要だと言うのは、CMを控えたスポンサーだけではない。フジのドラマやバラエティーで、泣いたり笑ったりしてきた視聴者の思いでもある。